中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業)
日本国内だけでなく、外国でも特許を取得したい場合は国内の費用に加えて国際出願費用、各国の出願費用が必要になり、資力の乏しい中小企業・スタートアップ企業にとっては大きな負担となります。そこで、特許庁では外国出願費用の半額を補助する事業を毎年行っています。
特許庁サイトのリンク|外国出願に要する費用の半額を補助します
事業内容の詳細は特許庁、JETRO、各都道府県の補助事業者のサイトをご確認ください。
概要としては以下の通りです。
支援の対象・要件(特許について抜粋)
- 中小企業者又は中小企業者で構成されるグループ(構成員のうち中小企業者が2/3以上を占める者)。
ただし、みなし大企業を除く。 - 以下(1)~(4)を満たすこと。
- (1)応募時に既に日本国特許庁に対して特許、実用新案出願済みであり、採択後に同内容の出願を優先権を主張して外国へ年度内に出願を行う予定の案件。
- ※ 優先権主張をしないPCT出願(ダイレクトPCT出願)、ハーグ出願については、出願時に日本国を指定締約国に含むこと。
- (2)先行技術調査等の結果からみて、外国での権利取得の可能性が明らかに否定されないこと。
- (3)外国で権利が成立した場合等において「当該権利を活用した事業展開を計画している」こと。
- (4)外国出願に必要な資金能力及び資金計画を有していること。
補助対象経費
外国特許庁への出願料、国内・現地代理人費用、翻訳費 等
補助率・上限額
補助助率
1/2
上限額
1企業に対する上限額:300万円(複数案件の場合)
案件ごとの上限額(特許について抜粋)
- 特許150万円
外国出願費用の助成を受ける際の注意点
外国で特許を取得することを考えている日本企業は、基本的には下の図のようにまずは日本特許庁に国内特許出願を行います。出願日から1年以内に優先権主張を伴うPCT出願を行い、優先日(日本特許出願日)から30か月(2.5年)以内に各国移行の手続を行います。優先権主張をしないPCT出願(ダイレクトPCT出願)の場合は、出願時に日本国を指定締約国に含めば補助対象になります。また、PCT出願をせず、パリ優先権を伴う外国出願も補助対象になりますが、優先権主張を伴わずに直接外国に出願する場合は補助対象外です。

PCT出願(国際段階)は助成金対象外
(1)応募時に既に日本国特許庁に対して特許、実用新案出願済みであり、採択後に同内容の出願を優先権を主張して外国へ年度内に出願を行う予定の案件。
上記の応募要件を読むと、「日本特許庁に対して特許出願済み」とは、優先権主張の基礎となる日本特許出願のことを指しているのか、日本特許出願を基礎としたPCT出願のことを指しているのかわかりにくいです。
Q13 PCT国際出願に要する経費に関して、具体的な補助対象経費とは何ですか?
A. PCT国際出願の場合は、各国(日本国を除く)への移行に要する費用のみが補助対象となります。
国際段階の手数料は補助対象ではありません。

Q&Aを見ると、上記のとおり「各国(日本国を除く)への移行に要する費用のみが補助対象国際段階の手数料は補助対象ではない」と書かれていますので、「日本特許庁に対して特許出願済み」とは「日本特許庁に対して優先権主張を伴うPCT出願済み」又は「日本特許庁に対してダイレクトPCT出願済み」と理解するのが妥当かと思います。
申請時期が限定的
助成を受けるための手続きは、以下の図のように、各県の補助事業者に補助金を申請し、2か月後くらいに採択の通知を受けてから各国への外国出願を行い、代理人弁理士には費用を支払います。補助金採択の通知から約3か月以内に補助事業者に報告書を提出し、書類に不備がなければ補助金が交付されます。

補助金の応募受付期間は各補助事業者によって異なりますが、概ね5月~8月の間の年1回が多いようです。JETROの場合、5月、7月、9月の3回応募受付期間があり、採択が約2か月後の7月、9月、11月、報告書提出期限が11月、12月、1月となっています(以下の表参照)。
5月応募受付、7月採択、11月報告書提出の補助金を申請した場合、国内移行(外国出願)は7月の採択後から11月の報告書提出期限までに行う必要があります。国内移行手続期限は優先日から2.5年なので、期限間際に国内移行をする場合、基礎出願の優先日は1月~4月である必要があります。以下の表を見るとわかりますが、8月~12月が優先日の特許出願については、国内移行期限時期にちょうど良いタイミングの補助金がないため、補助金を申請するためには国内移行時期を期限より早める必要があります。外国出願の補助金申請を行う場合は、PCT出願時には補助金申請の時期を考慮して国内移行時期を予め決めておくのが良いでしょう。

追跡調査がある
※ 採択された場合は、事業完了後5年間の状況調査(フォローアップ調査、ヒアリング等)を行います。
補助金に採択された場合は、補助対象とした特許の各国での権利化状況や活用状況を5年間にわたり毎年報告する必要があります。結構手間がかかりますし、5年も経つと申請時の担当者が退職していることも考えられますので引継ぎをしっかりしておかないと後任の担当者に負担がかかってしまいます。実施する可能性が低い特許や移行国が少ない場合は負担の方が重い結果になってしまうため、自社の事業にとって重要な特許を補助金の対象としましょう。