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パルワールド正式版リリース直前! 任天堂・ポケモン vs ポケットペア特許訴訟はいま、どうなっているのか【2026年7月最新版】

2026 7/08
特許
2026年7月8日
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代表弁理士の嵐田です。

2026年7月10日、ついに『パルワールド』の正式版(Version 1.0)がリリースされます。2024年1月のアーリーアクセス開始から約2年半、その間ずっとこのゲームに影を落としてきたのが、任天堂・株式会社ポケモンによる特許権侵害訴訟でした。

当ブログでも、パルワールドの仕様変更と任天堂特許の関係や、米国での「サブキャラクターを呼び出して戦わせる」特許(397特許)の拒絶など、この訴訟に関連するトピックをたびたび取り上げてきました。

正式版リリースというひとつの節目にあたり、本記事では「パルワールド訴訟はいま、どうなっているのか」を最新情報にアップデートします。特に、訴訟に使われた日本の特許ファミリーのその後の権利化状況と、対応する米国特許の権利化状況を整理します。

なお、本記事は2026年7月8日時点の公開情報(訴訟ウォッチサイトgames frayの報道、J-PlatPat・USPTOの公開記録等)に基づくものです。

目次

本記事の要約(忙しい人向け)

  • 東京地裁の訴訟は双方の主張立証がほぼ完了し、2026年10月1日に証拠調べ期日、同年11月9日に裁判所が心証(見解)を示す予定と報じられています。
  • 原告側(任天堂・ポケモン)は2025年11月に請求の範囲を「仕様変更前の旧バージョンのパルワールド」に限定しており、現行版や正式版1.0が差止めの対象となる可能性は事実上なくなりました。games frayは「任天堂が得られるのは最大でも500万円程度(約3万ドル)」と評しています。
  • 騎乗系の特許7528390号は、訴訟の最中に任天堂が訂正審判で請求項を訂正しました。
  • 米国では、対応特許としてUS12,179,111・US12,220,638(捕獲系)、US12,246,255・US12409387(搭乗系)が2024年末~2025年に登録済み。一方、2026年7月時点で米国での提訴はありません。
  • 別ファミリーの米国397特許(US12,403,397)は、USPTO長官の職権による再審査で全26クレームが拒絶(非最終)され、任天堂の応答期限は6月末まで延長されていました。

1. 訴訟のこれまでと現在地

まず、訴訟の基本情報をおさらいします。

任天堂と株式会社ポケモンは、2024年9月18日、パルワールドの開発元・株式会社ポケットペアを被告として、東京地方裁判所に特許権侵害訴訟を提起しました。請求内容は、パルワールドの差止めと、原告2社に対する各500万円(合計1,000万円)+遅延損害金の一部請求です。使われた特許は以下の3件です(ポケットペアの2024年11月8日付リリースで公表)。

特許番号出願日登録日概要
特許第7493117号2024年2月26日2024年5月22日捕獲アイテムの照準を合わせ、捕獲アイテムが命中した際に捕獲成功判定を行う仕組み
特許第7545191号2024年7月30日2024年8月27日捕獲アイテムまたは戦闘キャラクターを選択して照準方向に放ち、捕獲判定・戦闘開始を行う仕組み
特許第7528390号2024年3月5日2024年7月26日搭乗キャラクタへの搭乗を行う仕組み

3件ともパルワールド早期アクセス開始(2024年1月19日)後に出願され、分割出願として2021年12月22日の原出願の優先日に遡るという構成である点が、この訴訟の最大の特徴です(分割出願と優先日の仕組みは過去記事もご参照ください)。

その後の経過を時系列で整理すると、次のようになります。

  • 2025年1月31日:ポケットペアが非侵害の反論を提出。同年2月21日には無効の抗弁を提出。ARK、Craftopia(ポケットペア自身の前作)、タイタンフォール2、Far Cry 5、トゥームレイダー、オクトパストラベラー、Dark Soulsのmod「Pocket Souls」など、多数の実在ゲーム・modを先行技術として挙げました。
  • 2024年11月~2025年5月:ポケットペアはパルスフィアを投げてパルを召喚する仕様の変更(2024年11月)、パルによる滑空をグライダーアイテムに置き換える変更(2025年5月)など、係争特許を回避する仕様変更を実施。この点は過去記事で技術的に解説しました。
  • 2025年7月2日:任天堂が訴訟係属中に特許7528390号の訂正審判を請求し、認められました(審判番号:訂正2025-390051)。訴訟の最中に自ら特許を訂正するのは、無効リスクを強く意識した対応といえます。games frayは、訂正後の請求項に「even when(~であっても)」に相当する異例の文言が含まれる点を「奇妙(weird)」と評しています。
  • 2025年11月:原告側が請求の範囲を仕様変更前の旧バージョンに限定。この時点で、現行版のパルワールドに対する差止めは事実上、争点から外れました。
  • 2026年6月:games frayの報道によれば、双方の主張書面・証拠(専門家意見書を含む)の提出はほぼ完了。ポケットペア側は元裁判官による意見書も提出したとのことです。裁判所は2026年10月1日に証拠調べ期日を指定し、同年11月9日に心証を示す予定とされています。

つまり、正式版1.0の発売(2026年7月10日)に対して、この訴訟が差止めという形で影響を及ぼす可能性はほぼゼロというのが現状です。仮に原告側が旧バージョンについて侵害、損害額のすべての立証に成功したとしても、得られる賠償は請求額の範囲(一部請求で各500万円)にとどまり、games frayはこれを「chump change(はした金)」と表現しています。日本の特許侵害訴訟は、原則として「侵害論」と「損害論」を分ける二段階審理で進められるため、侵害論で裁判所が侵害の心証を示した場合、訴えの変更により請求額が変更される可能性はあります。それでも訴訟に使われた特許権の成立時期を考えると、高額な請求額にはならないのではないかと思います。

2. 日本の特許ファミリーのその後の権利化状況

2-1. 捕獲系ファミリー(’117・’191特許のファミリー)

訴訟で使われた3件のうち2件(特許7493117号・特許7545191号)は、2021年12月22日出願の原出願から分割を重ねた同一ファミリーに属します。このファミリーはパルワールド発売後に「早期審査」でスピード権利化が図られてきましたが、2025年秋以降、雲行きが変わりました。ファミリーの主要メンバーの現況は以下のとおりです。

出願/特許番号位置づけ現況(2026年7月時点)
1. 特許第7398425号原出願。優先日の基準(2021年12月22日)登録済み
2. 特許第7505852号原出願からの分割。’117特許等の親。登録済み
3. 特許第7505854号‘117特許からの分割。登録済み
 4. 特許第7493117号訴訟対象登録・権利存続中(無効の抗弁で争われている)
5. 特許第7819228号‘117の兄弟出願であり、’191等の親情報提供を受けるも、2026年3月11日に登録済
 6. 特許第7545191号特願2024-031879からの分割。訴訟対象登録・権利存続中(無効の抗弁で争われている)
7. 特願2026-019760分割の分割の分割。’191の兄弟。
照準をロックオンし、対象の捕獲数等の情報を表示する
2026年2月18日に審査請求済
8. 特願2026-019762分割の分割の分割。’191の兄弟。タッチパネル操作に特化2026年出願(早期審査)。2026年4月24日付で拒絶理由通知。2026年6月11日に意見書提出。

注目すべきは、拒絶理由の中身です。

特願2024-031879(5. 特許第7819228号)に対する2025年10月の拒絶理由通知では、第三者からの情報提供(2025年4月)を受けて、審査官が特許文献ではなく実在のゲームを引用しました。引用されたのは、ARK: Survival Evolved(YouTubeのプレイ動画)、Craftopia、モンスターハンター4、艦隊これくしょん、Pokémon GOなどです。「麻酔矢で敵の昏睡値を上げてからポッドを投げて仲間にする」というARKの仕様が、まさに請求項の構成に対応すると認定されています。

特願2026-019762は、既に訴訟で使っている捕獲メカニクスを「タッチパネル搭載装置」に限定して権利化を狙ったもので、games frayは今後リリース予定の『Palworld Mobile』やテンセントの『Roco Kingdom: World』を念頭に置いた出願だと分析しています。しかしこちらも2026年4月24日付で拒絶理由通知を受けました。引用文献には、Pokemon Generationsというポケモンのインディーズゲーム(個人制作?)のプレイ動画、ポケモン公式サイト(ポケットモンスターX・Yの「ポケモンをつかまえてなかまにしよう!」ページ)が含まれており、審査官は「戦闘中にモンスターボールを投げて捕獲できる仕様」「捕獲の成否判定」はポケモンシリーズ自体で周知の技術だと認定しています。自社の過去の公開が自社出願の先行技術になるという、特許制度の基本原則がそのまま表れた事例です。その拒絶理由通知に対し、2026年6月に提出した最新の意見書では、権利侵害品の動画を引用したことについて審査官の認定の誤りを指摘しつつ、進歩性があることを主張しています。

審査官が特許文献だけでなく実際のゲーム(動画・攻略Wiki・公式サイト)を積極的に引用するようになったことは、このファミリー全体の有効性に対する逆風とみられています。games frayも「同じファミリーの中心メンバーの問題は、他のメンバー(=訴訟対象の’117・’191)の有効性の問題を示唆する」と指摘しています。もっとも、審査官の判断は侵害訴訟を担当する東京地裁を拘束するものではない点には注意が必要です。

2-2. 搭乗系ファミリー(’390特許のファミリー)

特許第7528390号(搭乗オブジェクトのスムーズな切り替え)も、2021年12月の原出願からの分割です。興味深いことに、ポケットペアは原出願より半年早い2021年6月の時点で、パルに乗って滑空する仕様をデモ映像で公開していたことが指摘されています(games fray 2025年5月11日記事)。

前述のとおり、任天堂はこの特許について2025年に訂正審判を請求し、請求項を減縮する訂正が認められました。訂正によって無効リスクを下げつつ侵害立証も維持する「針の穴を通す」対応ですが、そもそもパルワールドが「スムーズな切り替え」を実装しているのか自体に疑義があることは、以前から指摘してきたとおりです。

3. 対応する米国特許の権利化状況

任天堂・ポケモンは、日本の訴訟と並行して、同じ2021年12月22日の原出願に遡る米国出願を積み上げてきました。一時は「米国でも提訴か」と観測されましたが、2026年7月時点で米国での訴訟提起はありません。権利化状況は以下のとおりです。

米国特許/出願対応する系統経緯・現況
US12179111捕獲系(’191と同系統:捕獲アイテム/戦闘キャラの2モード)2024年5月2日出願(出願番号18/652,874。2021年12月出願からの継続)、2024年12月31日登録。ただし登録前の2024年11月の許可通知の段階でポケットペアが仕様変更を実施しており、games frayは「登録された時点で既に使い物にならなくなっていた可能性」を指摘
US12220638捕獲系(’117と同系統:捕獲成功率インジケータを含む)2024年7月18日出願(’874の分割)、2025年2月11日登録
US12246255搭乗系(’390と同系統:飛行→地上騎乗のスムーズな切り替え)2022年9月出願(パルワールド発売前)、登録前に補正を重ね2025年3月11日登録
US12409387搭乗系2024年5月2日出願。2024年12月4日に最終拒絶(23クレーム中22クレーム拒絶)→審査官面接→クレーム補正+ターミナルディスクレーマー提出で2025年4月に許可通知。しかし任天堂は特許料を納付せず、2025年7月3日に新たなクレームを提出して審査を継続。2025年9月9日に登録。

このように米国では、捕獲系2件・騎乗系2件の計4件が登録済みです。ポケットペアが仕様変更を重ねた結果、任天堂は「現行のパルワールドに読める(侵害を主張できる)クレーム」を確保できておらず、games frayはこの攻防を「トムとジェリー」に例えています。

参考:別ファミリーの397特許は再審査で全クレーム拒絶

なお、過去記事で詳しく解説した米国特許US12,403,397(サブキャラクターを呼び出して2つのモードで戦わせる特許)は、パルワールド訴訟の3特許とは別ファミリー(2023年3月出願、2021年12月への優先権主張なし)ですが、その後の経過を補足しておきます。

2025年9月2日の登録後、同年11月4日にUSPTOのSquires長官が異例の職権による査定系再審査(ex parte reexamination)を命令。2026年3月25日付の非最終Office Actionで全26クレームが自明として拒絶されました。引用されたのは任天堂自身の公開出願(Taura・Motokura)、コナミ(Yabe)、バンダイナムコ(Shimomoto)の4件の特許文献です。任天堂は応答期限の延長を申請し、2026年6月末まで延長が認められていました。今後の任天堂の応答内容が注目されます。

4. 考察:この2年間で何が変わったのか

この訴訟をめぐる状況の変化として特に重要なのは、次の3点だと考えています。

第一に、ゲーム特許の権利化のハードルが上がりました。 任天堂のUS特許について、一度登録されたにもかかわらず、USPTO長官が異例の職権による査定系再審査命令がなされたことは驚きでした。ゲーム特許への関心が一段上がったように思われます。

第二に、第三者による情報提供(刊行物提出)の有効性です。 特願2024-031879の拒絶は、2025年4月の第三者からの情報提供が引き金になったとみられます。games frayが「予防(prophylaxis)」と呼ぶように、係争リスクのある他社出願の審査段階で先行技術を特許庁に届けることは、ゲーム業界に限らず、訴訟を未然に防ぐ有効な手段になり得ます。当事者でなくても匿名で行える制度である点も重要です。

第三に、「回避設計+分割出願の応酬」という構図の定着です。 ポケットペアは仕様変更で特許を回避し、任天堂は分割出願・継続出願で新しいクレームを繰り出す。この「動く標的」の追いかけっこの結果、原告側は請求範囲を旧バージョンに限定せざるを得なくなりました。特許権者側から見れば、権利行使を見据えた分割出願の係属維持は定石ですが、被疑侵害者側の機動的な設計変更がそれを上回った事例といえます。

まとめ

  • 東京地裁の審理は最終盤。2026年10月1日の期日を経て、11月9日に裁判所の心証が示される見込みです。
  • 請求範囲は旧バージョンに限定済みで、7月10日発売の製品版1.0に法的な影響はありません。
  • 日本の捕獲系ファミリーでは、関連出願2件が実在ゲームを引用した進歩性欠如の拒絶理由を受けており、訴訟対象特許の有効性にも間接的な逆風となっています。
  • 米国では対応特許3件が登録済みですが提訴はなく、4件目の出願は係属維持されています。別ファミリーの397特許は再審査で全クレーム拒絶(非最終)となりました。

秋以降、裁判所の判断が示されれば、ゲームルール特許の侵害・有効性判断に関する重要な先例になる可能性があります。続報があれば、当ブログでも取り上げたいと思います。


※本記事は2026年7月8日時点の公開情報に基づいています。特許の権利化状況・審査経過は変動しますので、最新の状況はJ-PlatPat・USPTO Patent Centerでご確認ください。また、本記事は公開情報に基づく分析であり、個別の侵害・有効性に関する鑑定意見ではありません。

【主な参照元】

  • games fray「Ahead of October 1 court hearing, Nintendo has zero chance of prevailing over current Palworld versions」(2026年6月11日)
  • games fray「Taking aim at Palworld Mobile: Nintendo trying to obtain touchscreen-specific patent on monster capturing — and thus far failing」(2026年5月14日)
  • games fray「Japan Patent Office rejects Nintendo application relevant to Palworld dispute, cites games like ARK as prior art」(2025年10月29日)
  • games fray「U.S. patent examiner rejects Nintendo’s “summon subcharacter and let it fight in 1 of 2 modes” patent as obvious」(2026年4月1日)
  • games fray「Nintendo secures two more anti-Palworld U.S. patents」(2025年4月3日)ほか同サイトの一連の報道
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嵐田 亮
代表弁理士
中小企業、スタートアップ企業の知財業務を全力でサポートします。
特許(バイオ・化学分野)、商標、知財契約が得意です。
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