商標調査の際に知っておくと便利な「類似群コード」について説明します。
類似群コードを知ることで、商標調査の方法や調査結果の見方がより理解できるようになります。
忙しい人のためのまとめ
- 商標とは、標章を指定商品・指定役務に使用するものである
- 商標の類否は、標章の類否、指定商品・指定役務の類否に基づいて判断される
- 指定商品・指定役務の類否は、類似群コードが同じか否かである
商標の定義と類否
「商標」の定義
商標法上の商標とは、標章を指定商品・指定役務について使用するものをいいます(商標法第2条第1項)。
ここで、標章とは、
(1)文字、図形、記号、立体的形状、色彩、音、その他政令で定めるもの
(2)文字、図形、記号、立体的形状、色彩同士が結合したもの
のことを言います。
つまり文字単体、ロゴ単体では商標ではなく標章と言います。
商標の類似・非類似
特許庁に出願された商標は、特許庁において先に出願された商標と類似・非類似(以下、「類否」といいます)を審査されることになります。商標は、標章を指定商品・指定役務について使用するものであるため、
(1)標章の類否
(2)指定商品・指定役務の類否
がそれぞれ判断されます。
商標の類否は、標章が同一又は類似で指定商品・指定役務が同一又は類似であれば類似と判断されます。何を言っているのかわからないと思いますので、図示すると以下のようになります。
逆に考えると、指定商品・指定役務が非類似であれば、標章が同一であっても商標全体としては非類似と判断されます。標章が似ているかどうかは専門家でも意見が分かれますが、指定商品・指定役務が似ているかどうかはほぼ一義的に決まります。指定商品・指定役務の類否を決めるのが類似群コードなのです。
商標の区分と類似群コード
商標の区分
商標の区分とは、ある程度似通った商品・役務を「区分」としてカテゴリーごとに分けたもので、商標を出願する際の単位ともなっています。区分は第1類から第45類まで45区分あり、第1類~第34類が商品の区分、第35類~第45類が役務の区分となっています。
各区分にどのような商品・役務が含まれているかは、特許庁の「類似商品・役務審査基準(外部リンク)」に載っています。
類似群コード
各区分の商品・役務には、数字とアルファベットの組み合わせからなる五桁の「類似群コード」が付されています。特許庁の審査実務上、同じ類似群コードが付された商品・役務は、原則としてお互いに類似するものと推定されます。「推定」なので反対の事実や証拠があれば覆すことも可能な概念ではありますが、同じ類似群コードが付された商品同士の類似性を否定するのはかなり困難と考えて良いでしょう。
次に類似群コードを具体的にみてみます。「類似商品・役務審査基準」の区分第1類の最初に出てくる商品は「化学品」ですが、その類似群コードは右側の「01A01」であることが確認できます。この「数字2桁+アルファベット1文字+数字2桁」のコードが類似群コードです。
類似群コードは、同じ区分の中に複数付されています。
例えば第1類では、以下の15個の類似群コードがあります。
- 化学品 01A01
- 工業用のり及び接着剤 01A02
- 植物成長調整剤類 01B02
- 肥料 02A01
- 陶磁器用釉(ゆう)薬 03B02
- 塗装用パテ 03C01
- 高級脂肪酸 05E01
- 非鉄金属 06A02
- 非金属鉱物 06B01
- 写真材料 10E01
- 試験紙(医療用のものを除く。) 25A01
- 人口甘味料 31A03
- 工業用粉類 33A03
- 原料プラスチック 34A01
- パルプ 34D01
そして、類似群コードは区分をまたがって付されることもあります。
第16類は「紙、印刷物、写真、製図」の区分ですが、以下の「紙類」には「25A01」という類似群コードが付されています。これは、上のリストで緑色の下線を引いた「試験紙(医療用のものを除く。)」と同じ類似群コードです。
つまり、試験紙を第1類の指定商品として商標出願した場合、第16類の紙類の先行商標と類否判断されてしまうことになります。
このように、商標の審査では先行商標との指定商品・指定役務の類否は類似群コードを用いて判断されるため、商標の区分ではなく類似群コードを用いて先行商標調査を行う方が効率的と言えます。