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令和6年3月27日 知財高裁令和5年(行ケ)10131号 商標・審決取消訴訟「hololive Indonesia」 ~品質誤認(4条1項16号)を理由に拒絶が確定した事案~

2025 4/30
判例 商標
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目次

事件の概要

 本件は、カバー株式会社が「hololive Indonesia」(12区分)を商標登録出願し、商標法第4条第1項第16号違反の拒絶理由通知書を受けて審決取消訴訟まで争った事案である。主な時系列は以下のとおり。

日付手続主体メモ
2021/12/22出願カバー㈱「hololive Indonesia」を標準文字で出願(第3・9・14・16・18・21・24〜26・35・41・43類、12区分)​​
2022/05/30拒絶理由通知審査官4条1項16号(品質・役務の質の誤認)​​
2022/06/13意見書提出出願人「VTuberユニット名として周知。誤認のおそれなし」などを主張​​
2022/08/08拒絶査定審査官主張は採用されず拒絶​​
2022/09/29不服審判請求出願人​
2023/10/10審決審判部請求棄却(拒絶維持)​​
2023/11/09審決取消訴訟提起出願人東京地裁経由・知財高裁移送
2024/03/27判決知財高裁第4部原告請求棄却(拒絶確定)​​

審査、審判における出願人の主張と特許庁の判断

審査における出願人の主張と特許庁の主張について

拒絶理由通知書の抜粋

■第4条第1項第16号(品質等誤認)
 本願商標は、「hololive Indonesia」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中に、東南アジア群島部にある共和国のインドネシアを表した「Indonesia」の欧文字を有してなるものですから、これを「インドネシア製の商品」「インドネシアで提供される役務」以外の商品・役務に使用するときは、その商品の品質・役務の質について誤認を生じさせるおそれがあります。 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第16号に該当します。

 ただし、本願の指定商品(指定役務)を、例えば、「インドネシア製の(商品)」「インドネシアで提供される(役務)」に補正したときは、この拒絶理由は解消します。

 「hololive Indonesia」の商標には、国名である「Indonesia」の文字が含まれているため、これを「インドネシア製の商品」「インドネシアで提供される役務」以外の商品・役務に使用するときは、その商品の品質・役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるとして商標法第4条第1項第16号に該当すると判断した。
 なお、「インドネシア製の(商品)」「インドネシアで提供される(役務)」に補正すれば拒絶理由が解消するとの補正の示唆があった。

意見書の抜粋

(1)本願商標を構成する文字について
 本願商標は、「hololive Indonesia」を標準文字にて表してなるものですが、このうち「hololive」の文字は、出願人が管理・運営する、所謂、「VTuber」(Virtual YouTuber。キャラクター(アバター)を用いてインターネット上に動画を投稿する者)のグループ名として使用されるものです。
 また、本願商標を構成する「Indonesia」の文字は、審査官殿ご認定のように東南アジア群島部にある共和国のインドネシアを表すものですが、「hololive」の文字と合わせて「hololive Indonesia」として使用されることにより、前記VTuberのグループ「hololive」に所属するVTuberのうち、インドネシアを拠点にして活動をしているVTuberから構成されるユニット名として使用されるものです。 証拠1を参照すると、hololiveという商標の中に多数のタレントが所属し、その中のIndonesiaという部門にも複数のタレントが所属していることが分かります。
(2)本願商標について
 本願商標を構成する文字の趣旨・意味は上述の通りであり、本願商標は、VTuberのグループ「hololive」に所属するVTuberのうち、インドネシアを拠点にして活動をしているVTuberから構成されるユニット、及び当該ユニットの構成員たる各VTuberと関連付けて、各本願指定商品・指定役務について使用されるものです。
 証拠2を参照すると「hololive Indonesia」に複数のVtuberが所属していることが分かります。
 そして、証拠3を参照すると、「hololive Indonesia」に所属しているVtuberのグッズが多数販売されていることが分かります。
(3)本願商標の周知著名性について
 前記VTuberから構成されるユニット「hololive Indonesia」の動画共有プラットフォーム「YouTube」における同ユニットの公式チャンネルには、2022年6月5日時点で、30万人以上ものチャンネル登録者がおります。 また、2022年6月5日時点で、「hololive Indonesia」には9名のVTuberが所属しており、「YouTube」における各9名のVTuberの公式チャンネルには、それぞれ67.6万人、109万人、58万人、107万人、49.4万人、62.4万人、40.3万人、27.9万人、69.6万人ものチャンネル登録者がおります。
 したがって、本願商標は、インドネシアを拠点として活動するVTuberのユニット名として周知著名です。

(4)「誤認を生ずるおそれ」について
 御庁の「商標審査基準」には、商標法第4条第1項第16号の「誤認を生ずるおそれ」に関して、「商標中に、商品の品質等を表す文字等を有する場合であっても、出願に係る商標が、出願人の店舗名、商号、屋号等を表すものとして需要者に広く認識されており、需要者が商品の品質等を誤認するおそれがないと認められるときには、本号に該当しないと判断する。」との記載があります。
 本願商標中には、商品の品質等を表す文字「Indonesia」を有しますが、本願商標は、上述の通り、出願人の屋号等、すなわち、その管理・運営に係るユニット名として需要者に広く認識されており、需要者が商品の品質等を誤認するおそれはありません。
(5)本願商標の需要者について
 本願商標は、上述の通り、前記VTuberのユニット名を指称するものであり、当該ユニット及び当該ユニットの構成員のVTuberに関連する商品・役務について使用されるもので、その需要者は、当該ユニット及び/又は当該ユニットの構成員のVTuberのファンですので、本願商標を構成する文字が上記(1)で述べた趣旨・意味であることを十分に熟知しているのであって、本願商標を用いて提供される商品・役務について、「当該ユニット及び当該ユニットの構成員のVTuberに関連する商品・役務」であると容易に理解するのであり、「インドネシア製の商品」であるとか「インドネシアで提供される役務」であるとの誤認が生ずるおそれは皆無です。

  1. 屋号・ユニット名としての周知性
    「hololive Indonesia」の公式チャンネル登録者30万人以上、所属タレント9名の公式チャネルの登録者数を根拠に、VTuberユニット名として周知著名であると主張​​した。
  2. 需要者の範囲
    「hololive Indonesia」の商標が付された商品等の需要者は当該ユニット及び/又は当該ユニットの構成員のファンであり、ファンであれば「当該ユニット及び当該ユニットの構成員のVTuberに関連する商品・役務」であると容易に理解するのであり、「インドネシア製の商品」であるとか「インドネシアで提供される役務」であるとの誤認が生ずるおそれは皆無であると主張した。

 なお、意見書には出願人の切実な事情が伺える以下の記載があった。

 本願はマドプロの基礎となっており、12区分、10ヶ国で現在審査が進んでいる状況ですので、本願が拒絶査定となる影響は非常に大きいです。もし本意見書をもってしても拒絶理由が解消していないと判断される場合、査定前に一端補正指令書等の機会を与えて頂きますようお願いします。

審判における出願人の主張と特許庁の主張について

拒絶査定不服審判の請求書抜粋

(3)アイドルグループの名称について
 証拠3のページ上部に現れる動画、中央下寄りの「TALENT 所属タレント」の表示、及び下部の「新メンバー、募集。オーディションページへ」の表示 等からもご理解頂けるものと思料致しますが、「hololive」に所属するキャラクターは、あたかも仮想的なアイドルであり、「hololive」及び「hololive Indonesia」は、仮想的アイドルグループの名称であります。
 アイドルグループの名称に関連して、例えば、国民的アイドルグループとも言 われる「AKB48」は、東京の秋葉原を拠点として活動を開始したとされ(証拠6)、「AKB」の文字は、「秋葉原」を表しております。また、例えば、「AKB48」の姉妹グループと言われる「NMB48」、「NGT48」、「JKT48」は、それぞれ大阪市難波、新潟市、インドネシアのジャカルタを拠点に活動しており(証拠7・8・9)、「NMB」、「NGT」、「JKT」は、それぞれ「難波」、「新潟」、「ジャカルタ」を表しております。
 ここで、「NMB」、「NGT」及び「JKT」は、直接的に「難波」、「新潟」及び「ジャカルタ」を表す文字ではありませんが、上述の通り、「AKB48」が「国民的」と称される程に認知度が高く、併せて「AKB48」を構成する「AKB」の文字が「秋葉原」を意味するものであることも周知であることから、「AKB48」又はその姉妹グループのファンでなくとも、前述の「NMB」、「NGT」及び「JKT」は、それぞれ「難波」、「新潟」及び「ジャカルタ」を意味するものであることが容易に理解されるものです。
 上述の通り、アイドルグループの名称に、そのグループの活動拠点となる地名又は当該地名を示唆する文字が含まれる場合があることは、我が国において、周知されております。
 したがって、仮想的アイドルグループの名称である「hololive Indonesia」に関しましても、「インドネシア」を活動拠点とする仮想的アイドルグループの名称であると理解されるものです。
 そのため、仮想的アイドルグループ「hololive Indonesia」の関連商品・役務に使用される本願商標についても、その使用に係る商品・役務は、「インドネシア」を活動拠点とする仮想的アイドルグループ「hololive Indonesia」の関連商品・役務であることを理解させるものであって、間違っても、「インドネシア製の商品」であるとか「インドネシアで提供される役務」であると認識されることはありません。

  1. 屋号・ユニット名としての周知性
    YouTube公式チャンネル登録者“延べ806万人、「hololive Indonesia」の公式チャンネル登録者だけでも38万人以上であることを根拠に、VTuberグループ名として広く知られていると主張​​した。
  2. 需要者の範囲
    「hololive Indonesia」の商標が付された商品等の需要者は実質的にファン層に限られ、一般消費者は対象外ゆえ誤認は生じないと主張​した。
  3. アイドル名に地名を含む慣行
    「hololive Indonesia」の「Indonesia」は、「AKB48」の「AKB(秋葉原)」と同様に活動拠点表示であって産地表示ではないと指摘​​した。

1、2の主張は審査段階と同じで、審判請求書において3の主張(地名を含むアイドル名の慣行)が追加された。

拒絶査定不服審判の審決の抜粋

1 本願商標の商標法第4条第1項第16号該当性について
(1)本願商標について
 本願商標は、「hololive Indonesia」の文字を標準文字で表してなるものであり、その構成中の「hololive」の文字と「Indonesia」の文字との間には、1文字分の空白があるところ、「hololive」の文字は、一般の辞書等に載録されている語ではないのに対し、「Indonesia」の文字は、「東南アジア群島部にある共和国。」(「広辞苑 第7版」株式会社岩波書店)を意味する「インドネシア」の語を欧文字で表記したものと容易に理解されるものである。
(2)本願の指定商品及び指定役務に係る需要者について
 本願の指定商品及び指定役務は、別掲1のとおりであって、これには日用品やその小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、娯楽の提供及び飲食物の提供などの商品及び役務が含まれるものであるから、その需要者は、全国に及ぶ一般消費者が含まれるものである。
(3)本願商標の周知著名性について
 審判請求書及び回答書で提出した証拠2ないし証拠5及び証拠14ないし証拠33並びに請求人の主張によれば、「hololive Indonesia」の欧文字及び「ホロライブインドネシア」の片仮名並びに「hololive」の欧文字及び「ホロライブ」の片仮名が、請求人の管理・運営に係るウェブサイト上で、動画のタイトルやVTuber(Virtual YouTuber。キャラクター(アバター)を用いてインターネット上に動画を投稿する者)の公式チャンネル等に使用されていること、「ホロライブインドネシア記念日グッズ再販売企画」の見出しの下、「クッション、ショルダーバッグ、ネックレス、ルームスリッパ、抱き枕カバー、ラバーマット、ジュースグラス、ボウル」が請求人のウェブサイト上で販売されていることが認められるものの、本願の指定商品及び指定役務に係る各々の販売数量、売上高、取引状況等を定量的に示す証拠や需要者による本願商標の認識度を調査したアンケート結果等も一切提出されていないものである。
 そうすると、たとえ、「hololive Indonesia」の欧文字や「hololive」の欧文字が、請求人の管理・運営に係る「VTuber」のグループ名として使用され、また、2022年9月時点における当該グループ関連の動画投稿サイトにおける公式チャンネル登録者数が延べ806万人以上存在していたことが認められるとしても、これらに関心のある特定の需要者層においてはさておき、上記(2)のとおり、本願の指定商品及び指定役務の需要者である全国に及ぶ一般消費者に至るまで、「hololive Indonesia」又は「hololive」の欧文字が、特定の「VTuber」に係るグループ名を表す語として広く知られていたものと認めることはできない。
 したがって、「hololive Indonesia」の文字からなる本願商標は、本願の指定商品及び指定役務に係る需要者の間に広く認識されている商標と認めることはできず、また、「hololive」の欧文字から特定の「VTuber」に係るグループ名を認識できる需要者も特定の需要者層に限られるものといわざるを得ない。

(4)判断
 上記(2)及び(3)によれば、本願商標は、「VTuber」による動画投稿サイトに関心のある特定の需要者層においては、特定の「VTuber」に係るグループの名称として一連一体の商標として認識され得る可能性はあるとしても、それ以外の全国に及ぶ一般消費者を含む本願の指定商品及び指定役務に係る需要者の間において、広く認識されている商標と認めることはできないから、全国に及ぶ一般消費者においては、本願商標の構成中の「hololive」の文字を特定の語義を生じない造語として理解するものであり、また、本願商標の構成文字全体を一連一体で特定の意味合いを有する成語とは認識しないものである。そうすると、全国に及ぶ一般消費者においては、本願商標を「hololive」の文字と「Indonesia」の文字とに分離して認識、理解するものと認められる。

特許庁審決の判断

  • 周知性否定:「全国の一般消費者」まで認識が及ぶ証拠はなく周知とは認められない​​。
  • 需要者の想定:指定商品役務には日用品・飲食提供まで含まれ、ファンに限定できない​​。
  • 誤認リスク:インドネシア製・由来と誤信される余地が相当程度あるため4条1項16号該当​。

知財高裁の判断(令和6年3月27日判決)

審決取消訴訟の原告の主張

1 原告の主張
(1) 需要者について
 商品の品質又は役務の質の誤認を生じると、その商標から生じる観念を期待して商品を購入し、あるいは役務の提供を受けた需要者に不利益を及ぼすことから、商標法1条に規定する「需要者の利益を保護する」という法目的を実現させるために同法4条1項16号が規定されている。
 したがって、同号の該当性判断において、本願商標の指定商品及び指定役務の需要者は、単に、商標登録願の指定商品及び指定役務の記載のみから画定するのではなく、本願商標の使用に係る指定商品及び指定役務の需要者とみるべきである。
 本願商標を構成する「hololive」の文字は、原告が管理及び運営するVTuberのアバターであるキャラクターのグループ名称として使用されるものである(甲2、3、33)。本願商標を構成する「Indonesia」の文字は、「東南アジア群島部にある共和国のインドネシア」を表すものであるが、「hololive」の文字と合わせて「hololive Indonesia」として、上記VTuberのキャラクターグループ「hololive」に所属するキャラクターのうち、インドネシアを拠点にして活動をしているものから構成されるグループ名称として使用される(甲4)。
 本願商標は、このようなグループ及び当該グループの構成員である各キャラクターと関連付けて、各本願指定商品及び指定役務について使用されるものである(甲5、25~32)。つまり、本願商標の使用に係る指定商品及び指定役務は、このようなグループ関連の商品及び役務、いわゆるキャラクターグッズ等であり、当該グループ又はその構成員キャラクターのファン以外の者が、本願商標を構成する「Indonesia」の文字が前記グループ及びキャラクターの活動拠点であることを知らずに、「インドネシアで生産された商品」あるいは「インドネシアに関連する役務」等と認識して購入することは、社会通念に照らして、およそ考えられない。本願商標の使用に係る指定商品及び指定役務は、原告のウェブサイトを中心に販売及び提供されているもので、例えば、本願商標「hololive Indonesia」等をキーワードとしてインターネット検索を行わない限り当該ウェブサイトに到達しづらいことからも、当該グループ及び当該グループの構成員のキャラクターのファン以外の者が本願商標に接する蓋然性は極めて低い。
(2) アイドルグループの名称における地名の使用について
 本願商標は、仮想的アイドルグループの名称として使用され、かつ、当該仮想的アイドルグループ関連の商品及び役務に使用されるものである。
 一方、アイドルグループの名称には、当該グループの活動拠点を表す地域的名称等が含まれることは周知の事実である(例えば「AKB48」の「AKB」の文字は、「秋葉原」を表している。)。このような地域的名称を含む芸能人グループの名称の使用に係る商品等が多数存在しているが、当該地域的名称は、当該商品の生産地等とは認識され得ない。
(3) 本願商標の周知性について
 令和4年9月26日時点で、「YouTube」において、「hololive」の公式チャンネル(甲14)には185万人、「hololive Indonesia」の公式チャンネル(甲15)には38万人以上ものチャンネル登録者がいる。「hololive Indonesia」のメンバーであるVTuberそれぞれの公式チャンネル(甲16~24)も多数の登録者を得ている。これらを合計すると、延べ806万人以上となる。
 商標審査基準は、「出願に係る商標が、出願人の店舗名、商号、屋号等を表すものとして需要者に広く認識されて」いる場合には商標法4条1項16号は適用しない旨記載しているところ、上記の登録者数からは、本願商標が、原告のVTuberのアバターであるキャラクターのグループ名称を表すものとして需要者に広く認識されているということができる。
 本件審決の認定は、本願商標が、本願商標の指定商品及び指定役務の出所識別標識として需要者の間に広く認識されているか否かを問題としており、判断の対象を誤ったものである。
(4) 国際的調和について
 商標に国名が含まれる場合に直ちに誤認混同を生じると認定する国は日本のみである。商品や役務において国境が無くなりつつある現在の状況において、外国と日本とで判断基準に大きな差があるのは問題である。

  1. 屋号・ユニット名としての周知性
    YouTube公式チャンネル登録者“延べ806万人、「hololive Indonesia」の公式チャンネル登録者だけでも38万人以上であることを根拠に、VTuberグループ名として広く知られていると主張​​した。
  2. 需要者の範囲
    「hololive Indonesia」の商標が付された商品等の需要者は実質的にファン層に限られ、一般消費者は対象外ゆえ誤認は生じないと主張​した。
  3. アイドル名に地名を含む慣行
    「hololive Indonesia」の「Indonesia」は、「AKB48」の「AKB(秋葉原)」と同様に活動拠点表示であって産地表示ではないと指摘​​した。
  4. 国際的調和
    商標に国名が含まれると誤認混同を生じると認定する国は日本のみであり、外国と日本で判断基準に差があるのは問題であると主張した。

1、2、3の主張は審判と同じで、4の主張(国際的調和)が追加された。

知財高裁の判断

第4 当裁判所の判断
 1 取消事由(商標法4条1項16号該当性の判断の誤り)について
 (1)商標法4条1項16号について
 商標法4条1項16号の趣旨は、商標を構成する文字、図形等が直接的に特定の商品の特性を表示したものであるため、当該商標が特定の商品以外の商品に使用された場合に、取引者、需要者が商品の品質を誤認して、商品を購入することがないように取引者、需要者の保護を図ることにある。取引者又は需要者において、本願商標の構成から将来を含め一般に認識される特性を有する特定の商品と指定商品とが関連し、かつ、本願商標が表示している特定の商品の特性と指定商品が有する特性が異なるため、本願商標を指定商品に使用した場合に、本願商標が使用された「商品の品質の誤認を生ずるおそれ」があることになる。
 (2)本願商標について
ア 本願商標は、「hololive Indonesia」の文字を標準文字で表してなるものであり、「hololive」の文字と「Indonesia」の文字との間には、1文字分の空白があり、「hololive」の文字と「Indonesia」の文字を組み合わせたものと理解される。
 「hololive」の文字は辞書に載っていない造語であり、自他商品の識別力を有するものである。「Indonesia」の部分は、我が国における英語ないしローマ字の普及度からみて、需要者において、「インドネシア」と読むこと、「東南アジア群島部にある共和国」(乙1)であるインドネシアを欧文表記したものであることが容易に理解できるものと認められる。
 そして、我が国において、国名としてのインドネシアは広く知られている(乙2~4)。
イ 各種ウェブサイトによれば、自他商品又は自他役務の識別力を有する文字と、「インドネシア」あるいは「Indonesia」の文字を組み合わせたものとして、「(Zalora Indonesia ザローラ・インドネシア)」(乙8、ファッション)、「(Reebonz Indonesia リーボンツ・インドネシア)」(乙8、主にバッグ、靴、ジュエリー)、「(Ree Indonesia リー・インドネシア)」(乙8、インドネシアのデザイナーが製作した衣料ブランドを取り扱う。)、「マクドナルドインドネシア」(乙9、ファストフード)、「丸亀インドネシア」(乙10、うどん)がある。そして、これらは、いずれも、インドネシアで生産される物又はインドネシアで提供される役務に関するものである。
ウ 本願の指定商品及び指定役務には、例えば、第3類「化粧品」「香料」、第9類「スマートフォン用ストラップ」「コンピュータ用ゲームソフトウェア(記憶されたもの)」「コンピュータ用ゲームソフトウェア(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの)」「眼鏡の部品及び附属品」、(省略)及び第43類「飲食物の提供」等、一般消費者が需要者となるものが含まれている。
 各種ウェブサイトには、これらの指定商品又は指定役務に対応する商品又は役務であって、インドネシアで生産等されたもの、あるいはインドネシアに由来するものとして、例えば、化粧品、香水(乙31)、香油(乙35)、携帯ストラップ(乙38)、(省略)、インドネシア料理(乙33)等が、我が国で販売ないし提供されていることが示されている。
エ 以上のとおり、
▲1▼ 本願商標のうち「hololive」の部分は造語であり自他商品又は自他役務の識別力を有するのに対し、「Indonesia」の部分は、一般に知られた東南アジアの共和国であるインドネシアを意味することは需要者において容易に理解できること、
▲2▼ 自他商品又は自他役務の識別力を有する文字と、「インドネシア」あるいは「Indonesia」の文字を組み合わせたものがインドネシアで生産される物又はインドネシアで提供される役務に関して使用されていること、
▲3▼ 本願の指定商品及び指定役務には一般消費者が需要者となるものが含まれ、これに対応する商品又は役務でインドネシアで生産等されたもの、ないしはインドネシアに由来するものが我が国で販売ないし提供されていることが認められるのであって、そうすると、本願商標をその指定商品及び指定役務について使用するときは、これに接する需要者は、その構成中の「Indonesia」の文字から、インドネシアで生産又は販売された商品や、インドネシアに関する役務といった商品の品質又は役務の質を通常理解するものというべきである。
 一方、本願の指定商品及び指定役務は、インドネシアに関するものに限定されていないから、インドネシアで生産又は販売された商品以外の商品やインドネシアに関する役務以外の役務も含むことになる。
 以上によると、本願商標をその指定商品及び指定役務中、インドネシアで生産又は販売された商品以外の商品や、インドネシアに関する役務以外の役務に使用した場合には、商品又は役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、本願商標は、商標法4条1項16号に該当するというべきである。

(3) 原告の主張について
ア 原告は、本願商標の使用に係る指定商品及び指定役務は、バーチャルアイドルであるVTuberグループ関連の商品及び役務、いわゆるキャラクターグッズ等であり、当該グループ又はその構成員キャラクターのファン以外の者が、本願商標を構成する「Indonesia」の文字が前記グループ及びキャラクターの活動拠点であることを知らずに、「インドネシアで生産された商品」あるいは「インドネシアに関連する役務」等と認識して購入することは考えられず、本願商標の使用に係る指定商品及び指定役務は、原告のウェブサイトを中心に提供されていることからも、上記ファン以外の者が本願商標に触れることは考えにくい旨主張する。
 しかし、本願商標の指定商品及び指定役務の需要者はVTuberグループのファンに限られるものではなく、また、原告の主張からしても、原告のウェブサイトのみでこれらの商品が提供されているわけではないのであって、原告の主張は採用できない。
イ 原告は、本願商標は、仮想的アイドルグループの名称として使用され、かつ、当該仮想的アイドルグループ関連の商品及び役務に使用されるものであるところ、地域的名称を含む芸能人グループの名称の使用に係る商品等において、当該地域的名称は、当該商品の生産地等とは認識され得ない旨主張する。
 しかし、一般需要者において、本願商標が芸能人グループの名称であると認識するような事情は認められず、原告の主張は前提を欠くものである。
ウ 原告は、YouTubeにおける「hololive」、「hololive Indonesia」及び「hololive Indonesia」に属する個々のVTuberのチャンネルの登録者は延べ806万人以上になるから(甲14~24)、本願商標は原告のVTuberのアバターであるキャラクターのグループ名称を表すものとして需要者に広く認識されている旨主張する。
しかし、「hololive」のチャンネルの登録者は185万人である(甲14)ものの、その他の各チャンネル(甲15~24)については、映像等の多くが欧文字で投稿されていることから、登録者のうちどの程度が日本の需要者であるのかの裏付けはないというべきで、「hololive」、「hololive Indonesia」が原告のVTuberのアバターであるキャラクターのグループ名称を表すものとして我が国の需要者に広く認識されていると認めることはできない。
エ 原告は、商標に国名が含まれる場合に直ちに誤認混同を生じると認定する国は日本のみであり、不当である旨主張する。しかし、本件審決は、商標に「Indonesia」の文字が含まれることの一事をもって本願商標が商標法4条1項16号に該当すると認めたわけではなく、本願の指定商品及び指定役務に係る需要者の範囲とその認識等について個別に検討・判断しているところ、その判断手法は相当であるから、原告の主張は採用できない。

商標権者の主張と裁判所の判断

  1. 屋号・ユニット名としての周知性
    YouTube公式チャンネル登録者“延べ806万人、「hololive Indonesia」の公式チャンネル登録者だけでも38万人以上であることを根拠に、VTuberグループ名として広く知られていると主張​​した。
    ⇒ 「hololive」のチャンネル以外の各チャンネルは、映像等の多くが欧文字で投稿されていることから、登録者のうちどの程度が日本の需要者であるのかの裏付けはないというべきで、「hololive Indonesia」」が原告のVTuberグループ名称を表すものとして我が国の需要者に広く認識されていると認めることはできない。
  2. 需要者の範囲
    「hololive Indonesia」の商標が付された商品等の需要者は実質的にファン層に限られ、一般消費者は対象外ゆえ誤認は生じないと主張​した。
    ⇒ 本願商標の指定商品及び指定役務の需要者はVTuberグループのファンに限られるものではなく、また、原告の主張からしても、原告のウェブサイトのみでこれらの商品が提供されているわけではない
  3. アイドル名に地名を含む慣行
    「hololive Indonesia」の「Indonesia」は、「AKB48」の「AKB(秋葉原)」と同様に活動拠点表示であって産地表示ではないと指摘​​した。
    ⇒ 一般需要者において、本願商標が芸能人グループの名称であると認識するような事情は認められず、原告の主張は前提を欠く
  4. 国際的調和
    商標に国名が含まれると誤認混同を生じると認定する国は日本のみであり、外国と日本で判断基準に差があるのは問題であると主張した。
    ⇒ 本件審決は、商標に「Indonesia」の文字が含まれることの一事をもって本願商標が商標法4条1項16号に該当すると認めたわけではなく、本願の指定商品及び指定役務に係る需要者の範囲とその認識等について個別に検討・判断しているところ、その判断手法は相当である

実務上のポイント

  1. 地名+ブランド名は高リスク
    • 国名・地域名が含まれるときは,指定商品役務を当該地域の産品・サービスに限定する補正を検討。
  2. “ファン層限定”は通用しにくい
    • 審査・裁判所は「全国の一般消費者」を需要者の基準とする傾向。ターゲットが限定的であっても証拠がなければ採用されにくい。
  3. 周知性立証のハードル
    • 登録者数やSNSフォロワーだけでは足りず,日本国内の売上・アンケート等定量的資料が必須。
  4. アイドル・VTuber 名+地名でも例外視されない
    • ステージネームやユニット名であっても,「場所」を示す語が一般的に産地等と結びつく場合は4条1項16号違反を免れない。

筆者コメント

 拒絶理由通知書に示唆があったとおり、「インドネシア製の(商品)」「インドネシアで提供される(役務)」に補正すれば登録になっていた案件ですが、実際の事業において、VTuberグループのグッズがインドネシア製とは限らないことは容易に想像がつきます。そのため、インドネシア製の限定は避けたいという出願人の意向は非常に良く理解できます。
 また、ユニット名が「hololive Indonesia」ではなく、例えば「hololive ID」や「hololive IDN」のように略語で表記されていればインドネシアの国名と直接結びつけられることなく登録になっていたと思われます。知財担当者としては商標審査のことも考慮してネーミングを決めて欲しかったなと思ってしまうところですが、既にそれなりに知名度を獲得しているグループ名を商標登録のために変更してほしいとは言い辛い状況であったと推測されます。
 VTuber やアイドルグループが海外拠点を冠したネーミングを採るケースは増えていますが、本件のように商標登録では「ファンの認識」よりも「一般消費者の誤認可能性」が強く重視されるようです。周知性を主張するためには、裁判所の指摘にあるように、国内における定量データ(売上・来店数・PV など)を計画的に収集する必要があると言えます。

参考資料

  • 拒絶理由通知書(2022.5.30)
  • 意見書(2022.6.13)
  • 拒絶査定(2022.8.8)
  • 審決(2023.10.10)

以上は商願2021-159976の経過情報から入手
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2021-159976/40/ja

  • 知財高裁判決(2024.3.27)

以上は本記事投稿時点で知財高裁の判例サイトにアップロードされていなかったため、J-PlatPatのホーム/審決検索より入手。

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判例 商標 審決取消訴訟 商標法4条1項16号 VTuber hololive 地名を含む商標

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嵐田 亮
代表弁理士
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